いすみ鉄道では現在自社養成乗務員訓練生の第6期生を募集しています。
これは今から4年以上前の2010年3月に始めた鉄道業界初の訓練費用を自己負担していただいて列車の乗務員になるという画期的な制度で、当時は賛否両論大きな話題になりました。
日本の鉄道は長い間国が運営してきましたので、今でも鉄道会社というとお役所以上にお役所的なところが多く、そういう業界では「前例にないこと」は極端に嫌う傾向があります。
でも、いすみ鉄道をはじめとするローカル線の疲弊は、長年にわたり前例通りのことをやってきた結果の現状でありますから、今までと同じことをやっていたのでは将来がないのです。
そこで、私は、いすみ鉄道の社長として、養成に長い時間がかかる乗務員の訓練を訓練費自己負担という形で2010年にスタートさせ、応募してきた優秀な人財が、今、乗務員としてある程度ベテランの域に達して、いすみ鉄道の輸送を日夜支えてくれる状態になりました。
今回は、あれから5年近くの年月が経過したことから、いすみ鉄道の自社養成乗務員訓練制度について、今一度皆様方にお知らせし、会社のポリシーや考え方について知っていただこうと考えました。
【訓練費用を自己負担するということについて】
お前の会社はお金がないからそういう出鱈目なことを考えるんだろう。
そうおっしゃられる方が多くいらっしゃいます。
でも、日本の国の制度を見まわしてみると、資格を必要とする職業の代表である弁護士、裁判官、医師をはじめとして、飛行機のパイロット、船舶操縦士、バス運転士など、ほとんどすべての職業が、「まず初めに自分のお金と、能力と、時間を使って資格を取得すること。」が常識となっています。
ところが、鉄道の乗務員だけは運転士になるためには「まず、鉄道会社に入ること」が求められるわけで、この点では鉄道の免許制度は一般社会からはかけ離れた独特の制度を大昔から脈々と運営してきたことになります。
JRや大手私鉄などの大きな組織ならばそれでも良いのかもしれませんが、ローカル線のような弱小会社では、約2年間にわたる養成期間中に給料を払うことがとても難しいわけで、その分の訓練費用を自己負担していただこうというのが根底の考え方です。
【募集概要】
・いすみ鉄道車内で乗務員養成を実施いたします。
・国交省の動力車操縦士(甲種内燃)の取得を目的とします。
・資格取得後はいすみ鉄道乗務員として列車に乗務していただきます。(勤務形態については個人の希望を考慮します。)
・訓練費用は応募者にご負担いただきます。
・訓練期間中は契約嘱託社員(訓練生)として、資格取得後は契約嘱託乗務員として当社既定の賃金をお支払いいたします。
・訓練期間は国家資格取得後の社内習熟訓練期間を含め、個人差もありますがほぼ2年です。
【応募資格】
・いすみ鉄道での訓練及び勤務可能な範囲に居住すること。(おおむね首都圏地域)
・動力車乗務員としての訓練、勤務に耐えうる学力、身体状況を維持していること。
・訓練期間(約1年半~2年間)、継続して当社が指定する訓練を受けることができること。
・訓練開始時点で訓練費の支払いができること。
・年齢、性別は問いませんが訓練内容からおおむね50歳代を上限と考えています。
【訓練費用について】
・訓練費700万円を採用時にご負担いただきます。
・資格取得後は契約嘱託乗務員として乗務していただきます。
・採用後、ご自身の都合による訓練の中止、契約を解除する場合は納入後の訓練費の返却はしません。
・この訓練は資格取得だけを目的とするものではありません。
【訓練内容】
・第一段階(入社から約1年間)
地域密着型の鉄道会社の職員として、さまざまな業務を経験していただき、鉄道マンとしての心構えを含む「意識」を身に着けていただきます。
具体的には車両のメンテナンス、駅でのお客様対応、売店勤務、アテンダントなどです。同時に週1回程度、座学講習として、学科試験に向けた教育を受けていただきます。
・第2段階(入社後1年)
入社から1年かけて鉄道マンとしての知識、意識を身に着けていただき、3月に実施される国交省の動力車操縦士(学科試験・適性検査)を受験します。
・第3段階(入社後1年~1年半)
学科試験、適性検査合格後、実際の列車を運転する乗務訓練を開始します。
乗務訓練はベテラン運転士とペアを組んで実際の列車に乗務して行います。
この乗務訓練は約2か月間で、その後、国交省の技能試験を受験します。
・第4段階(入社後1年半~2年)
国交省の試験に合格し、正式の資格取得後も引き続き指導運転士とペアを組んで乗務訓練(OJT訓練)を約半年間継続します。その後、社内の見極め審査に合格すると晴れて1人前の運転士として一人乗務がスタートします。
以上がこの募集についての内容になります。
しかしながら過去5年間の経験から、次のような方は会社として採用することはできませんのであらかじめご了承ください。
・健康状態の維持が困難とみられる方。
2年間にわたる訓練期間中に健康状態の維持がこんなと認められる方は採用できません。40代以降の方に見られますのでご注意ください。
・家族の了解が得られない方。
乗務員になることについて家族の了解を得られない方は採用いたしません。特に多いのが子育て世代で定期的な収入を必要とする方が現在お勤めの会社をお辞めになっていすみ鉄道を希望される場合で、たとえ当初700万円の資金が確保できていたとしても、訓練期間中を含め、将来の生活に不安が残るような方は乗務員としての精神的安定性を欠くことが予想されますので採用いたしません。
・運転士だけを希望する方。
いすみ鉄道はワンマン運転です。また土休日を中心に観光鉄道としてたくさんの観光客にいらしていただいております。そういう職場ですから、お客様に対する接客マナーなど、運転士と言えどもソフトな部分が大きな仕事になります。また、小さな会社ですから運転以外でも出札窓口、販売管理、車両メンテナンス、売店、イベントなど様々な業務をマルチに担当していただきます。「自分は運転だけ」という方は採用されません。
・チームワークを乱す方。
40代、50代であっても訓練期間中は1訓練生であり、年下の指導者から指導を受けます。また正規資格取得後も乗務員、内勤者、駅務、売店スタッフなどの連携の中で鉄道の運営が行われています。さまざまな過去の経歴をお持ちのスタッフが集まっている職場ではチームワークが大きな力となります。チームワークを乱すような自己中心的な方は採用になりません。
このような場合は事情を考慮します。
・40代以上の社会人経験者を採用する場合、家族の問題など様々な個人的事情が突発する場合があります。このような時はみんなで助け合って行くのがチームワークです。一時的に訓練に通うことができなくなることも予想されますが、ご本人が継続したいという意思がある限り、その個人的な事情を考慮して対応いたします。
・同様に一時的に身体的事由で受験ができない場合も予想されます。このような時も状況を考慮してできる限り訓練を継続します。
・試験に落ちた場合は、再度受験していただきます。国の試験は年に2回ですから再試験のチャンスは半年後になります。また再試験は2度まで受験可能です。3回以上試験に不合格となった場合は、状況により訓練を継続するか中止するかを決定いたします。
以上が今回の募集についての説明になります。
なお、第1期生を募集した時の内容がこのブログの過去帳の中の
2010年3月5日(本音で語り合いましょう)
2010年3月6日(本音で語り合いましょう その2)
に掲載されています。
スタート時の考え方、ポリシーが記されていますが、現在乗務員として活躍されている第1期生の皆さんがこれを読んで共感していただき入社を決意された時のものです。
よろしければご一読ください。
なお、この自社養成乗務員について受験希望者以外からの「ご意見」につきましては、いすみ鉄道では対応いたしませんのであらかじめご承知おきください。
「お前の考え方は間違ってる!」などという電話や投書がたくさん来るのですが、一切お返事は致しておりませんので、そういう方はどうぞスルーしていただきたいと思います。
【追記】
今回の募集は本年12月31日必着分を締切といたします。
その後、ご応募いただきました皆様へ、面接および各種試験のご案内をいたしますが、面接したからと言って必ず入社しなければならないというものではございませんので、まじめにご考慮されていらっしゃる方でしたら、どうぞ応募されて、社長である私と直接お話をして疑問点などを解決されることをお勧めいたします。
また、来年入社以外の方でもエントリー制で履歴書は常に募集していますが、必要乗務員数に達しましたらこの訓練生の募集は中止いたします。
必要乗務員はおおむね18マンパワー(資格取得者、現在訓練中の人を合わせて14名)ですので、どうぞご理解くださいますようお願い申し上げます。
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