ママに怒られる

南海トラフ警戒とか台風とか、このところ下向きな話題ばかりなので、今日はトーマスに乗りました。

おかげさまで今日のトーマスは朝から大人気で行列ができていましたが、15時過ぎの3号には空席がありましたので、会議が早く終わったので、ちょっと乗りに行きました。

茶畑の中を走るきかんしゃトーマス号です。

JAの直売所KADODEが併設されている門出駅は、トーマスが通過する時刻にはこんなにたくさんの人がカメラを構えて待ち構えています。
こりゃもったいないですねえ。
入場券を売らなければ。

今、大井川鐵道は途中の川根温泉笹間渡駅までしか運転していませんが、一番の見どころはこの鉄橋です。

鉄道部と打ち合わせをして先週からこの鉄橋を最徐行で渡るようにしました。
もちろん汽笛を鳴らしながら。

するとどうでしょう。
河原で遊んでいる子供たちはもちろんですが、対岸の川根温泉ホテルや日帰り温泉施設「ふれあいの湯」のお客さんたちがSLに向かって手を振ってくれるのです。

わかりますか?

とんがり屋根の建物が温泉ですが、向かって左側が男湯、右側が女湯。
男湯の方は皆さん立ち上がって手を振っていますね。
右側の女湯の方からも手を振ってくれているのですが、こちらは塀が高くなっています。でも、男湯の方は塀が低いんです。(あたりまえか)
でもって、おじさんたちみんな立ち上がっちゃってるんですから、つまり、その~。

大丈夫ですか?

乗客の皆様、この瞬間を見逃してはいけないのです。
特に女子は必見でしょう。

別に見たくないか・・・

列車はここ川根温泉笹間渡駅で折り返します。
この先は土砂崩れで行けないのです。
でもって、先頭のトーマスから反対側の電気機関車に運転台を切り替えるために10分ほど停車します。
この時に、ホームに登場するのがアイスクリームの立ち売りなんです。

懐かしいなあ。
アイスクリームの立ち売り。

子供の頃、勝浦のおばあちゃんちへ行くときに、両国から乗ったディーゼル急行「そと房」が大網の駅でスイッチバックのため5分ぐらい停車したんです。
その時にホームにアイスクリームを売りに来たんですよ。
当時は冷房車じゃないのでアイスクリームがなんとありがたかったことか。
昭和45年ごろの話ですが、青木屋さんというお店が20円でカップに入ったアイスクリームを売ってまして、おばあちゃんちへ行くときにはお決まりの儀式として、アイスクリームを買ってもらったんです。

いやいや、懐かしいなあ。

トーマスの客車は半世紀前と同じように冷房じゃありませんから、うだるような暑さの中、アイスクリームはありがたいですよね。

到着前に車掌さんから車内アナウンスでお知らせがあるんです。

「川根温泉笹間渡駅ではホームでアイスクリームを販売しています。窓からご購入ください。」ってね。

ホームの立ち売りのアイス。
窓から買う。

このシチュエーションがたまりません。
鉄道の旅の醍醐味ですよ。

で、車掌さんの車内アナウンスは続きます。

「アイスクリームは1個500円です。現金のみです。おつりのないようにお願いします。」

えっ?
1個500円?

ずいぶんじゃないの?

一瞬ひるむわけです。

でもうだるような暑さ。
窓が開く車両。
ホームの立ち売りのアイスクリーム。

「アイスクリームいかがですか? ここでしか買えないおいしいアイスクリームですよ。」

この笑顔でアプローチされると、当然ですが、

「すみません。アイス1つ!」

と言ってしまうのです。

1個500円!

「え~っ、このアイスが1つ500円なの? 高い!」

うちのママに言ったら、絶対怒られるだろうなあ。

と、庶民的な私はそう思うわけです。

「ありがとうございます。」

と、おじさん。

で、おじさんは次の窓へ行くのです。
次の窓は家族4人が座ってます。

案の定、隣の座席のママは
「すみません、2つ下さい。」

おじさん
「ありがとうございます。1000円です。」

そりゃそうだよね。
2個で1000円なら、4人で2つでしょう。

おじさん、商売がわかっていらっしゃるようで、
「ではスプーンは4つお付けしましょう。」

なにしろ、シンカンセンスゴクカタイアイスだって400円なんですから、1個500円だと、そりゃあ考えますよね。

はい、こちらがオオイガワテツドウ・スゴク高いアイスです。

ところがですね、このアイス、食べてびっくり、実においしいのです。

「おいしいね、これ」

隣の座席から、そんな声が聞こえてきます。

そこへ、ひと通り回り終えたおじさんが通りがかります。

すると、隣のママ、

「すみません。」

とおじさんに声をかけるではないですか?

どうしたのかな?

「アイス、あと2つ下さい。」

と、隣のママ。

おじさんにっこり笑って、「ありがとうございます。」

「スプーンはありますから大丈夫です。」と、ママ。

結局、ちびっ子たちも合わせて4個、2000円。毎度あり~~、でございます。

うちのママも、この場に居合わせたらきっと許してくれるのかな。

だって、このシチュエーションで、家族みんなで食べるアイスクリームならプライスレスですからね。

何にしろ、64歳のお爺さんが小学生の頃に大網の駅で買ってもらったアイスクリームが、今でも思い出になっているんですから、トーマスに乗って、暑い車内で家族みんなでアイスクリームを食べたら、たぶん、「あの時のアイスおいしかったね」って、その子がお爺さんになっても思い出してくれるかもしれません。

だから、プライスレスなのです。

大井川鐵道でアイスクリームを500円で売ってるってのは、そういうことなのです。

だから、ママ、許してね。

今度、ママの大好物の千疋屋のフルーツケーキと焼きたてのアップルパイを買って帰りますから。

おじさん、バイバ~イ

暑い中、ありがとうございました。

そして列車は再び鉄橋を渡るのであります。

今度来るときは双眼鏡を持って来ましょうかね。
これならママも喜んでくれるかも。(爆)