各駅停車のコスパ

先日、ちょっと種村直樹先生の話をしましたので、今日は宮脇俊三先生のお話し。

もう半世紀近くも前の話ですから知らない方も多いと思いますが、昭和の終わりごろに活躍した鉄道作家を2名あげろと言われればこのお二人の先生になるでしょう。

で、私は宮脇俊三先生の作品をよく読んでいました。
私の印象では(あくまでも個人的見解ですが)、種村先生はジャーナリストであり、宮脇先生は文学者的でありましたから、書かれる作品の内容も異なっていて、種村先生は国鉄の旅客営業規則を詳細に解説するのに対して、宮脇先生の方は列車に乗りながら地方都市を歩き回って、その土地のお酒や名物料理をいただいたり、時にはちょっと艶っぽいお店に足を踏み入れたりという、紀行文的な作品が多かったように記憶しています。

その宮脇先生が文中で書かれているフレーズを私は今でも覚えています。

「各駅停車は目的地まで時間がかかる。特急列車はすぐに着いてしまう。にもかかわらず、各駅停車は安く、特急列車は高い。どうして長く乗っていられる方が安くて、すぐに到着して列車から追い出される方が高いのか不思議だ。だから私は安くて長く乗っていられる各駅停車に乗る方を選ぶ。」

確かこのような内容だったと思います。

ある意味正論ではないでしょうか?
長く乗っていられるということは、鉄道会社的にはそれだけコストがかかるわけです。
簡単に言えば人件費だって時間がかかる方が余計にかかります。
同じ距離を8時間かかって走る各駅停車と、4時間で行く特急列車であれば、各駅停車の方が人件費は2倍ですよね。
車両だって、各駅停車が1往復するところを特急列車なら2往復できる。
つまり、各駅停車は高コスト体質なわけです。

しかしながら各駅停車は乗車券だけで乗れる。
対して特急列車は乗車券の他に特急料金がかかる。

つまり、コストは半分なのにいただくお金は倍近くもらえるとすれば、鉄道会社は各駅停車などやめてしまってみんな特急列車にするのが一番儲かるのです。
考えてみれば半世紀前に宮脇先生がこのように言われたことが、今、現実になっているわけで、国民は皆何も考えずに自動的に新幹線に乗るようにさせられているのです。

ということは、利用者としてみたら特急列車ではなくて各駅停車に乗るのが一番コスパが良いということになります。
だから、宮脇先生は好んで各駅停車に乗って旅をしていたということになりますね。

まぁ半世紀近く前の各駅停車はこんな感じでしたから、私も全国各地を乗り歩きましたけど、鉄道だけじゃなくて飛行機もそうなんですよ。

直行便と経由便だったら当然経由便の方が時間がかかりますよね。
そして直行便は高くて経由便は安い。
宮脇先生の影響で私はヨーロッパへ行くときに、直行便はまだありませんでしたが、アンカレジ経由北回り便やモスクワ経由の便ではなくて、わざわざ南回り便というのを使って30時間ほどかけて行ってみました。

アンカレッジ経由が当時17~8時間ぐらいだったかな。
だから南回り便は倍近く時間がかかる。
私が乗った便はアリタリア航空でしたが、成田―香港―バンコックーデリーーアテネ―ローマ―パリ―ロンドン。
当時は航空券が高い時代でしたが、このルートで往復20万円ほどでした。
これに対してアンカレッジ経由の北回り便は27~8万していたと思います。
しかも、1フライトごとに機内食が出るのです。
東京-香港
香港-バンコック
バンコックーデリー
デリーーアテネ
アテネーローマ
ローマーパリ
パリーロンドン
7回も機内食が出るのですから、コスパを考えたら絶対にお得でしょう。
その後もロサンゼルスへ行くときにわざわざホノルル経由で行ったり、台北に行くときに香港経由で行ったり。
長く乗っていられて割安な運賃ですから、コスパとしては最高だというのを、私は宮脇先生の言葉を実践してきたのであります。

でも、まぁ、最近では各駅停車列車も新型電車になっているところが多くて、あまり乗りたいと思わないのです。
年齢的な面もあるとは思いますけどね。
でも、新型電車になっているということは、下手なボロい特急なんかよりも減価償却費が多くかかるはずですから鉄道会社にとっては高コストな列車になっているかもしれません。
だとしたら乗る側にとって見たらコスパが良いということになりますよね。

ということで、コスパを考える皆様方はぜひ各駅停車の旅をお勧めいたします。

ただし、いい歳したお爺さんたちが「青春18きっぷが使い勝手が悪くなったのはけしからん」、などと言っているのを見るにつけ、なんだか品がないなあと思いますよ。
各駅停車の旅は良いとして、青春18きっぷなどとけち臭いことを言わずにふつうに切符を買って乗りましょうよ。
それだって十分に安いのですから。
だいいち、みっともないですよ。
渋ちんは。
お金が無いわけじゃないんですから。
習性として染みついちゃってる感が出て、どうもみっともない。

ということで、若者の皆さん、ぜひぜひ、各駅停車で旅をしてください。
いろいろな発見がありますよ。
学生のうちから親の金でグリーン車でふんぞり返っているようなのは、ろくな人間になりませんよ。
と、私は思います。

おじさん、お爺さんたちは、大井川鐵道の旧型客車の旅をお楽しみください。
1日乗って4800円ですから。

それでも高いという人たちは、偶数月の15日にファミレスで祝杯をあげていればよいと思います。

あくまでも個人的見解ということで。

今度のお休みは大井川鐵道でお待ちいたしております。