本日のお客様

本日は福島県会津若松市の室井照平市長さんがお見えになられました。

只見線、会津線の活性化のご相談ということでした。

このあいだも福島市の木幡市長さんにお会いしましたが、私の母親の両親、おじいちゃん、おばあちゃんは福島市の飯坂と土湯の出身なので、私の体には半分は福島の血が流れているのです。

だから、福島県のことになると他人ごとではないというのが正直な気持ちでして、前職どころか前々職時代から只見線の復旧は他人ごとではなく何度も足を運んできましたし、只見線の運転再開に向けての只見線利活用会議の委員も務めさせていただきました。

そのお仕事のコミットメントとして去年と今年、えちごトキめき鉄道の雪月花を只見線に乗り入れさせていただき、活性化と話題作りに全面協力させていただいたことは皆様ご存じのことと思います。

私は64歳になりましたから、通り一遍の話をしてもカッコつけても、あるいは権力に忖度しても、地域の活性化にも地方創生にも程遠いということは身をもって知っていますから、ザックバランに正直ベースでお話をすることにしています。
そして、そういう私を受け入れてくれる組織なのか、あるいは「けしからん」と拒絶する組織なのか、お仕事のお話をいただいた時点でリトマス試験紙を使うように判別させていただくことにしています。

だから、今日も正直ベースでお聞きしたのです。

日本全国の地方自治体というのは東京を向いています。
あるいはその地域で一番の大都市を向いています。
当然、会津若松市も東京を向いているし福島市や仙台市を向いているでしょう。
ということは、会津若松市にとっては会津線沿線も只見線沿線も背中側になるわけで、どうしてその会津線や只見線について市長さんがこうして一生懸命になられるんですか。

これ、日本全体の傾向ですから別に福島県に限ったことじゃないんです。

例えば九州の肥薩おれんじ鉄道は熊本県と鹿児島県にまたがっています。
九州の人たちは皆さん博多を向いていますから、地政学的には熊本県にとって鹿児島県は背中側に当たります。
ということは熊本県にとって鹿児島県を結ぶ肥薩おれんじ鉄道よりも、博多へ向かうJR九州の路線の方が重要度が高いんです。

先日、熊本県からお仕事をいただいた時にも「なぜ、熊本県が肥薩おれんじ鉄道や肥薩線に力を入れるのですか?」と正直ベースでお聞きしました。

熊本県庁の皆様方がなんて答えたかはこの場では割愛しますが、その答えを聞いて私は、「へ~、そういうことですか。」と思いましたので、これは面白いと感じましてお仕事をお受けさせていただいたのですが、今日、会津若松市長さんに同じことをお聞きしたら、やはり同じお話をされたものですから、「それでは喜んで協力させていただきましょう。」とお話をお伺いしたのであります。

つまり、自分たちの県や市がよければそれでよいというような狭い了見ではなくて、簡単に言うと「ノブレス・オブリージュ」なのです。(簡単じゃないか・・・)

わからない人はネットで調べてくださいね。

例えば会津若松市の場合は地政学的に他の周辺地域よりも有利なんです。
でも、それはたまたまそうであるというだけで、自分の力で優位性を勝ち取ったわけでもない。
だから、そういう優位な地域にある人たちは、自分たちばかりでなく周囲のこともきちんと考えないといけない。
これがヨーロッパに古くから伝わるノブレス・オブリージュを現代風に解釈したものなのです。

私はヨーロッパの会社に長く居ましたから、そういうことを若いころから身をもって教育されているのですが、戦後の日本社会では自分さえよければ他人はどうなっても良いというような考えが、例えば最近の「自己責任」という言葉から感じるように、まことしやかに正当化されているということに非常に違和感を持っている。
それが私が60をとうに過ぎているにもかかわらず田舎の鉄道に身を投じている大きな動機なのですが、今の日本人はそういうことを忘れてしまっている。

ていうか、最高学府を出ているのにその程度の教養もない人間がたくさんいるのですが、今日、会津若松市長さんとお話をしていたら、まさしくそういうことでしたので、私は喜んで協力させていただこうと感じたのです。
他でもない福島県のことですしね。

で、観光列車を作る計画があるとおっしゃられたので、一言付け加えさせていただきました。
何て言ったかというと、

「沿線自治体の皆様方が、どんな観光列車がいいかと話し合われて作るとしたら、薄っぺらなものができますよ。」と。

観光列車というのは、その地域に用もない人たちが、その列車に乗るためにわざわざやってきたくなるような列車じゃなければなりません。
でも、自治体の人たち、つまり公務員的発想では周囲に気を配りすぎてしまい、とりあえずみんなが納得するようなものを作りたがります。
つまり、どこにでもあるような薄っぺらなものができるのです。

最近では日本全国で各自治体が観光に力を入れてますが、どれを見ても大した特徴があるわけでもなく、食指を動かされるものでもないようなものが全国に散見されます。

作る方はそれでもいいかもしれませんが、そうやってきて全部うまく行っていない。
それが現実ですから、そんな薄っぺらな観光列車など作ってみたところで成功しませんよ。

例えば、只見線のような豪雪地帯であれば、窓がない車両を作って雪の中を走るぐらいのことをやらなければ駄目ですよ。

そう申し上げましたところ、
「ぜひともそういうご意見が欲しいのです。」
と市長さんがおっしゃられましたので、私は喜んで協力させていただきますとお返事を差し上げました。

ということで、世界中からお客様がやってくる只見線ですから、多少の雪でも運休しないぐらいの尖った観光列車を作ってほしいので、ご協力させていただきたいと思います。

会津若松市長様、本日は遠いところをお越しくださいましてありがとうございました。

【参考】
成功する地域はこういう人をきちんと受け入れられる土壌があるのだと思います。

日本の観光地「陳腐化・老朽化」が止まらぬ4大原因 インバウンド復活も「まったく安心できない」訳 | レジャー・観光・ホテル | 東洋経済オンライン