いすみ鉄道の社長ブログは、地域活性化や地方創生に体当たりで取り組んで、ある程度の結果を出している人間が、ほぼ毎日その日にあった出来事や、気づいたことを軽妙な文章で書き綴っているので、いったい今現在の日本の地方ではどのようなことが行われているのか。どういうところに協力者がいて、どうしてさまざまなことが実現していくのか。あるいは逆に、どういうところに障害物があって、どういう理由でうまくいっていないのか。そういうことが読むだけで、わかる人にはわかる内容になっていますから、日刊東洋経済版ともいえる内容だと、霞が関からも高く評価されております。(これ事実)
だから、ここに書かれていることは、盛っていることなどほとんどなく、そういう点では、都合が悪い人もいるわけで、「あいつはけしからん」と日本全国で言っている人もいれば、「いやあ、読んでいてつかえていたものがストンと落ちました。」と評価してくれる人も多くいらっしゃるのです。
だいたい1億人も日本人がいれば、全員が全員、いすみ鉄道のやり方を評価してくれることなど望むべくもなく、社長である私のことを、「あいつは嫌いだ。」「あいつのやり方は気に食わない。」という人だって、1千万人ぐらいは居るわけで、基本的にはインターネットの世界ですから、そういう人たちはスルーしていただければよいと私は考えています。
一つだけ事実としていえることは、2010年に廃止されるはずだったいすみ鉄道が、今日もちゃんと走っているということで、沿線の高校生たちは毎日学校に通っていて、地域の貴重な足が立派に維持されているわけですから、方法論としての私のやり方をうんぬんする前に、ローカル鉄道が今日も走っているという事実をご評価いただく必要があるのであります。
このところ、私のブログに良い感情を抱いていない約1千万人の方々への配慮として、少しトーンを落としてきていましたが、「どいうしたんですか? 最近元気ないですねえ。」と心配してくれている人たちがたくさんいらっしゃるようです。
中には、「地域の偉い人たちからストップがかかってるんじゃないですか?」とか、「ブログなんかやめちまえと言われてるんじゃないですか?」というような、過剰なご心配をいただいている方もいらっしゃいまして、本当のところを申し上げれば、事実としてそのような圧力をかけられているということは全くございません。
そりゃあ、日本全国1千万人の人たちは私のことをお嫌いでしょうから、ブログを読まれて苦々しく思っている人もたくさんいらっしゃるとは思います。内容は事実ですし、日本全国同じようなところで地方創生の壁にぶち当たっていて、その壁の張本人たちにとって見たら、痛いところを突かれているわけですから、「あのやろう。」となる人もいるとは思いますよ。
でも、ここは中国大陸ではありませんから、私の書いたことが気に食わないという理由で、偉い人たちが圧力をかけてくることがあれば、それは大問題ということになりますから、霞が関も首相官邸も大臣官房も、そのあたりのことは百も承知で、だから何も言ってこないのです。
いや、逆に、中央省庁の会議に呼ばれて発言を求められているというのが事実なんですね。
ということで、ご心配をいただいている全国9千万人のいすみ鉄道社長ブログファンの皆様へ、そういう心配は無用でありますよという意味を込めて、私が考えている「観光戦略」について、少々所感を述べさせていただきたいと思います。
しばしお付き合いのほどを。
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最近は日本全国の田舎の町で、猫も杓子も「インバウンド」と言うようになりました。
ついこの間までは、観光鉄道化などという言葉を口にすると、「観光なんて遊びだろう。お前は税金を使って遊びをやるのか」と口から泡を吹く勢いで怒鳴っていたおじいさんたちが、わずか数年で「インバウンド」などという言葉を口にするようになったのは、何年も前からローカル線を観光資源ととらえて、ローカル線があれば観光客が来ますよ、沿線地域が全国区になりますよ、と言い続けて、いすみ鉄道でそれを具現化することを実践してきた私としては、自分のやってきたことが正しかったということですから、とてもうれしいのです。
でも、わずか数年前まで、日本全国のおじさんやおじいさんたちが「観光なんて遊びだろう。」と言っていたことを考えると、今その同じ口が「インバウンド」と言っていることに私は一抹の不安を覚えるとともに、疑問を抱かざるを得ません。
その疑問というのは、「インバウンドって何だか知ってますか?」ということです。
さて、ここから先は私の言うことに素直に耳を傾けるタイプの人たちには実に有効なお話になりますが、私の言うことに「なんだあいつは。偉そうなこと言いやがって。」という気持ちになるタイプの人たちはお読みいただかない方が良いということを最初に申しあげておきたいと思いますがよろしいでしょうか。
つまり、お読みになるからには自己責任でお願いしますということを最初に申しあげておきます。
では、田舎の町にとってインバウンドっていったいなんでしょうか?
インバウンドって言えば、そりゃあ、外国人のことだろう。
そう思われるのがふつうだと思いますが、それは違います。
インバウンドというのは、旅行会社の営業戦略として日本全体でみれば「内側に入ってくる人」という意味ですから、外国からのお客様という意味になります。でも、全国津々浦々の田舎の町にとって見たら、インバウンドというのは外国人のことではありません。
当然、外国人もある一定の割合が含まれるとは思いますが、インバウンドという言葉の意味を考えると「内側に向かって入ってくる」という意味ですから、田舎の町にとって見たら、自分のところへ来てくれる観光客全てがインバウンドということになります。
当然その中には外国人観光客も含まれるとは思いますが、田舎の町にとっては観光客にいらしていただくこと自体がインバウンドでありますから、「俺たちの町にも外人を」という意味でインバウンドという言葉を使っているとしたら、それは間違いなんです。
なぜなら、端的に申し上げると、現時点で日本人観光客も呼べていないようなところが、どうして外人を呼ぶことができるのか、という大きな現実を考慮していないからです。
数年前まで「観光なんて遊びだろう」と言っていたような田舎の町には、観光が立派な産業であるという概念がありません。
観光というのは、都会のお金を自分たちの地域に呼び込むことですから、これは立派な産業なんですが、自分たちが観光へ出かける気分でいると、そりゃあ遊びで行くわけですから、「観光なんて遊びだろう。」という言葉が口から出てくるわけです。
でも、その本人だって、観光へ出かける前日にはATMで1万円札を何枚も引き出して、自分のお財布の中に入れて出かけるわけです。同じように、田舎の町に観光にやってくる都会の人だって、来る前にATMでお金をおろして、お財布の中に1万円札を入れてやってくるわけですから、田舎の町だって、そういうお金を使いにやってくる観光客たちのお財布の中の1万円札を、どうしたら自分たちのお財布の中に呼び込むことができるかを考えてそれを実践するということは、立派な産業なわけです。
こういう基本的なことをまず勉強して、インバウンドイコール外人ではなくて、インバウンドというのは都会からの観光客だ、ということを理解して、どうやったら自分たちの地域にいらしていただくことを考えるのが観光産業ですから、当然産業としてのノウハウが必要になるわけです。
なぜなら、都会の人たちはいろいろなところへ出かけていて、いろいろな観光地を見ているのですから、大変目が肥えているし、評価基準も厳しい。そういう都会の人たちを相手に、ノウハウもない素人集団が商売をやったところで、目の肥えた都会人たちには相手にしてもらえません。
だから、きちんとした戦略が必要なのです。
実際問題として日本の総観光客数は年間2億人と言われています。
つまり、1億人いる日本人全員が年に2回観光旅行へ出かけるという計算になります。
その2億人の観光客の中に占める外国人観光客の人数は2000万人ですからちょうど1割です。
商売として考えたら、常識的に見て、まず大きなパイである9割の日本人をお客様にすることを考えるのが当然だと思いますが、不思議なことに日本全国の田舎の町では、その日本人観光客すら来ていないのに、1割のパイしかない外国人観光客に来てもらおうと「インバウンド戦略」を立ち上げようとしているわけですから、観光のプロから見たら、実に頓馬なやり方に見えるわけです。
そういうところでは、外国人に来てもらおうと考える前に、日本人観光客にたくさん来てもらうことをまずやらなければならないわけで、田舎の町の観光戦略として外国人狙いのインバウンドを掲げるべきところは、すでに日本人にとって観光地として定着し、たくさんの日本人観光客にいらしていただいているところが次のステップとしてやるべきなのです。
さて、私がこういうことを言うと、「あいつはけしからん。」という人たちと、「あいつは面白いなあ、うちに来てもらおうか」、というところが出てくるのも事実でして、最近では後者の需要が高まってきていますから、日本全国いろいろな自治体の議員さんや行政の関係者の方々がいすみ鉄道を訪ねていらっしゃいますし、私自身も日本全国あちらこちらの地域から「一度来てくれ」と呼ばれることしばしでありまして、私としては私のことをできるだけ高く評価していただける場所でお仕事をさせていただくということが、世の中の原理原則に従うという点で、やらなければならないことということになります。
つまり、ローカル線というのはいろいろな使い方があって、いすみ鉄道で展開している戦略は、鉄道とともに地域も一緒に浮上していく「トータル地域デザイン」でありますから、そのいすみ鉄道の戦略が1つの方程式として、「この通りに実践すれば、日本全国どの地域でもローカル線を使って浮上することができますよ。」と私は自分の専売特許を大盤振る舞いでこのように公開しているわけですから、冒頭に申しあげたとおり、このブログを詳細に読み解いていけば、そこに地方創生のカギがいくつも隠れているということがお分かりいただけるということなのです。
ですから、田舎の町がインバウンド戦略をする場合、いきなり外国人獲得戦略ではなくて、まずは日本人の観光客にいらしていただくことですよ、という私の話をご理解いただけるのであれば、私は皆様方の地域のお仕事のお手伝いを喜んでさせていただきたいと考えているのでございます。
(つづく)
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